株式に関するニュースを聞いているとよく耳にしますが、「自社株買い」って何か?何のためにするのか?皆さん説明できますか?
先日、ある方との会話で突然、聞かれたのですが、私も詳しくは説明できませんでした。「株式を発行した会社が、株主から株を買い戻すこと。」なんて答えてしまいました。
そこで今回は、私も詳しく勉強しなおすために、自社株買いについてメリットデメリットやその目的について書いていきたいと思います。
備忘録的な内容になりますので、すでにご存じの方は読み飛ばしていただいて構いません。
自社株買いってなに?
自社株買いは先ほども書きましたが、自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した株式を株式会社自らの資金を使って直接買い戻すことを言います。
自社株買いの目的
せっかく、販売した株式をなんでわざわざ買い戻さないの行けないの?と思う人もいるかもしれませんが、主な目的としては、「株主還元」と「ストックオプション」の2つになります。
株主還元
株主還元と言えば「配当金」や「株主優待」が頭に浮かぶと思いますが、自社株買いも株主還元になります。なぜかと言えば、自社株買いをして消却(発行している株式を消し去ること)することによって、PERやPBRなどの指標が良くなり、結果として株の値上がりが期待できるからです。配当金などは直接的な株主還元ですが、自社株買いは間接的な株主還元になります。
ストックオプション
ストックオプションは、株式会社があらかじめ決めた価格で、その会社の役員や従業員などが自社株を買うことができるようにした制度のことを言います。この場合には消却は行いません。株式の価格が上がれば従業員はその上昇分もらえる訳ですから、業績を上げて株価を上げようと頑張ります。
例えば、あらかじめ決めた金額が10万円で、業績が向上して株価が100万円になったとしたら従業員の利益は90万円になります。
自社株買いをするとなぜ株価が値上がりするのか?
自社株買いをすると株価が値上がりすると言いましたが、具体的にどのように指標が改善するのか参考例を使って説明したいと思います。
PERの低下
「PER」は、利益と株価の関係から割安性を測る指標です。PERの数字が小さいほど割安といえます。一般的には15倍以下が割安と言われていますが、この値にこだわらず、相対的にPERが小さくなれば割安ととらえられ、投資家の購買意欲をくすぐることになります。
実際の計算は、
株価÷1株あたりの利益
で求めます。
自社株買い前 | 自社株買い後 | |
株価 | 5,000円 | 5,000円 |
当期純利益 | 25,000万円 | 25,000万円 |
発行済み株式数 | 100万枚 | 80万枚 |
1株あたりの投機純利益 | 25,000万円÷100万枚=250円 | 25,000万円÷80万枚=312.5円 |
PER | 5,000円÷250円=20倍 | 5,000円÷312.5円=16倍 |
ROEの上昇
日本の投資家はあまり重要視しない指標ですが、海外の投資家では非常に一般的な指標になります。
「ROE」は、利益と株主資本の関係から収益性を測る指標です。ROEの数字が高いほど、株主資本を効率よく使って利益をあげているということになります。
実際の計算は、
1株あたりの利益÷1株あたりの株主資本
で求めます。
自社株買い前 | 自社株買い後 | |
株主資本額 | 50,000万円 | 40,000万円 |
当期純利益 | 25,000万円 | 25,000万円 |
PER | 25,000万円÷50,000万円=50% | 25,000万円÷40,000万円=62.5% |
PBRの低下
「PBR」は、純資産と株価の関係から割安性を測る指標です。PBRの数字が小さいほど割安言われています。一般的にPBRが1倍未満のときだけ割安感が増すことになります。
実際の計算は、
株価÷1株あたりの株主資本
で求めます。
自社株買い前 | 自社株買い後 | |
株価 | 5,000円 | 5,000円 |
株主資本 | 250,000万円 | 150,000万円 |
発行済み株式数 | 100万枚 | 80万枚 |
1株あたりの純資産 | 250,000万円÷100万枚=2,500円 | 150,000万円÷80万枚=1,875円 |
PBR | 2,500円÷5,000円=0.5倍 | 1,875円÷5,000円=0.375倍 |
緊急時の自社株買い
緊急的に株式会社が自己防衛するために自社株買いする場合もあります。
M&Aなどの敵対的買収があった場合には、自社株の価格を意図的に釣り上げて、買収価格を高騰させて撤退に追い込んだり、自社株買いをして消却せずに自己資本比率を上げていく方法に使われたりします。
このような自社株買いには巻き込まれたくないです。
まとめ
自社株買いは、主に、株主還元とストックオプション(社員への還元)のために行われるものです。経営状況は改善しないものの、自社株買いし消却してしまえば、割安になり、その分、価格が値上がりします。
実際には、自社株買いをしたときに値上がりするのではなく、自社株買いを公表したときに値上がりします。
自社株買いと言っても、企業側の狙いは数種類あり、すぐにはわかりません。情報をよく分析して、取引を行いたいところです。
自社株買いは基本的に、株価へは好材料として取り扱われますので、ニュースで自社株買いを耳にすれば、即、買っても良いと思います。