株式投資やFXなど、投資を始めた人は必ず耳にするのが「ダウ理論」です。
私も、株式投資ではテクニカル分析で銘柄選びや売買を行っていますが、市場全体の流れ(トレンド)を把握するためにダウ理論を利用しています。
テクニカル分析の基本中の基本と言っても過言ではないダウ理論について今回はわかりやすく解説していきたいと思います。
機関投資家や専業トレーダーなどはもちろんよく知っている理論で、有名が故にこの理論を逆手に取って罠を仕掛ける人もいます。ですので、現在はダウ理論だけで売買するのは危険すぎるのですが、相場のトレンドを把握するのには有効ですので覚えておいて損はありません。
ダウ理論て何?
ダウ理論はチャールズ・ダウ(1851年~1902年)が構築したチャート分析理論です。チャールズ・ダウはアメリカが西部開拓に沸いた19世紀後半に活躍した金融ジャーナリストです。金融専門紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』を創刊し、1896年にはダウ・ジョーンズ工業株平均株価を開発しました。現代の株式を語るには欠かせない人物です。
ダウ理論の基本法則
ダウ理論の基本法則は6つあります。理論と言うだけあってさぞ難しいだろうと思いがちですが、非常にシンプルです。
- 平均はすべての事象を織り込む
- トレンドには3種類ある
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均は相互に確認されなければならない
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
この6項目について詳しく説明いたします。
平均はすべての事象を織り込む
政府が発表する経済統計や企業の業績・更には自然災害の様な予測不可能な事象に至るまで、需給に関するあらゆる事象は全て市場価格に織り込まれているとするものです。市場価格はあらゆるファンダメンタル(材料)の反映であるという考えであり、その意味で効率的市場仮説の主張に基づいた考えとも言えます。
トレンドには3種類ある
ダウ理論では、価格変動の分析において市場動向(トレンド)を重視します。そのトレンドを以下の3つに分類しています。
- 主要トレンド:1年~数年のサイクル。(長期)
- 二次トレンド:3週間~3ヶ月のサイクル。(中期)
- 小トレンド :3週間未満のサイクル。(短期)
これらのトレンドは互いに独立しているのではなくて、二次トレンドは主要トレンドの調整局面であり、小トレンドは二次トレンドの調整局面として捉えられるという考え方です。移動平均線の短期・中期・長期のラインをイメージするとわかりやすいかもしれません。
主要トレンドは3段階からなる
また、主要トレンドは買い手の動向によって3つの段階からなるとしています。
- 先行期 :市場価格が下落し全ての悪材料は織り込み済みと判断した少数の投資家が、いわゆる”底値買い”をする時期。価格は、下落しているか底値圏で上下している。
- 追随期 :市場価格の上昇を見て追随者が買いを入れる時期。価格は、上昇局面にある。
- 利食い期:価格が充分に上昇したところを見て、先行期に買いを入れた投資家が売りに出て利益を確定する時期。価格は既にその前から上昇局面にあるものの、その上昇する値幅は小さくなっている。
平均は相互に確認されなければならない
複数の平均的指標が存在する場合、その両者に同じシグナルが見られないなら明らかにトレンドとして捉えることは出来ないと考えます。もっともシグナルが同時期に出現する必要はないものの、直近においてシグナルが発生していればトレンドとして捉えるべきで、且つ可能な限り同時期に近ければ確定的だてしています。
ダウが活躍した時代のアメリカでは、工業生産が盛んになると共に製品を輸送するための鉄道が整備された時期でした。工業生産の好調・不振は即座に鉄道業の経営に影響したことから、ダウが創刊した『ウォールストリート・ジャーナル』ではダウ・ジョーンズ工業平均株価と運輸株平均を複数の平均的指標としてチャート形式で掲載していました。
今で言えば、為替相場チャート(ドル円)と日経平均を比べて見るなどがあてはまると思います。
トレンドは出来高でも確認されなければならない
市場の終値の変動をダウは重視しますが、同様にトレンド発生の確認手段として出来高の推移も重視します。
例えば上昇局面においては値上がり時に出来高が増加し値下がり時には出来高が減少し、下降局面においては逆になります。主要トレンドに従って取引する投資家が多数派であり、二次トレンドや小トレンドで利益を得ようとする投資家は少数派であると考えて、それが出来高の多少に反映するとしています。
個別株売銘柄で、出来高を見ることによって、機関投資家が売り抜けたことを判断する場合にも出来高は重要で、極端に価格が下がって出来高が減ってしまうと、しばらくは価格の上昇は見込めなくなります。逆に出来高を伴わない価格上昇は、一過性で終わってしまいます。
トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
現在の市場で発現しているトレンドは、明確にトレンドの転換シグナルが現れるまで継続し続けるとしています。実はこの項目がダウ理論の肝になる部分で、一番テクニカル分析らしい項目になります。
トレンドに従った売買によって多くの投資家は利益を得られるので、トレンドに逆らった売買をしても利益を得るのは難しいと言っています。
具体的には以下の図がわかりやすいと思います。
図の中で売りエントリーと書いてある部分が、明らかなトレンドの転換点になります。上昇トレンドから下降トレンドに変わった点ということになります。
上昇トレンドの時であれば、安値①から高値①を超えたときに買いを入れることになりますし、下降トレンドであれば安値③の後、価格が上昇しそこから安値③を突き抜けたときに更に売りを入れるというやり方になります。
エントリータイミングよりも、トレンドの転換点を意識した方がわかりやすいと思います。
ダウ理論は応用して活用する
ダウ理論はもちろん売買のサインツールとして活用することは問題ありません。しかし、古典であるが故、様々なダマしも潜んでいますし、基本法則に当てはまらない事象も増えてきています。
もしテクニカル分析で活用するのであれば、他の分析結果と併せて投資判断を行っていくことが良いと思います。
例えば、「ダウ理論で明らかな下降トレンドに突入したのにRSIで買いのサインが出ている場合は、RSIの買いのサインは短期的か一時的なものなので買いを見送る。」という判断を下すというものです。
また、「窓を空けて下降トレンドに突入した場合には、一時的にその窓埋めに値が上昇することもあるので下降トレンドを一度疑ってみる。」など、応用テクニックに相当するものもあります。この辺りは経験も必要かと思いますので、投資経験を積みながら、時代に合った活用方法を見つけてみると強い武器になります。
まとめ
ダウ理論は簡単に言えば以下の6つの基本事項から成り立っています。
- 平均はすべての事象を織り込む
- トレンドには3種類ある
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均は相互に確認されなければならない
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
ダウ理論は、万能ではありません。しかし、すべてのテクニカル分析につながっていく最も基本となる理論です。
誰もが知っているいると言うことは、知らない人はもっと不利な状況に追い込まれてしまいます。機関投資家やプロのトレーダーがどのように出し抜いて稼いでいるのか理解するためにも、基本はしっかりと押さえておく必要があります。理解することでどのようにすればその罠に引っかからないのか対策を講じることもできます。
ダウ理論は、知らないよりは知っておいた方が良いと思いますので、理解できるまで、過去のチャートを眺めたりして検証してみてください。